かつて高齢者は、子どもによる私的な扶養や老後のための私的な貯蓄等によって老後生活を送っていました。
 貯蓄については、誰でも自分の寿命は予想できませんし、必要十分な貯蓄額を事前に知ることはできません。しかも、若いころから引退時、さらに寿命を全うするまでには何十年という長い時間があり、予想を超えるインフレによる貯蓄の目減りなどが生じる可能性もあります。
 子どもによる私的な扶養も不安定です。頼る子どもがすべての人にいるわけではありませんし、子ども自身の経済状況に左右されることになります。日本の社会の構造変化、特に第1次産業で働く人の激減、核家族化や若者の都会への集中、サラリーマン化等により、私的な扶養に頼ることはさらに難しくなりました。
 また、平均寿命が大幅に伸び、老後生活が長期化したことも、私的な扶養や貯蓄によって老後生活を送ることを困難にしています。
 今日、公的年金は、基本的には現役世代の保険料負担で高齢者世代を支えるという世代間扶養の考え方で運営されています。これは、1人1人で私的に行っていた老親の扶養・仕送りを、社会全体の仕組みに広げたものです。現役世代が全員でルールに従って保険料を納付し、そのときそのときの高齢者全体を支える仕組みは、私的な扶養の不安定性やそれをめぐる気兼ね・トラブルなどを避けるというメリットがあります。また、現役世代が生み出す富の一定割合をそのときそのときの高齢者世代に再分配するという仕組みをとることにより、*物価スライドによって実質的価値を維持した年金を一生涯にわたって保障するという、安定的な老後の所得保障を可能にしているのです。
 年金は、高齢者世代にとってはもちろんのこと、若い世代にとっても、自分の親の私的な扶養や自分自身の老後の心配を取り除く役割を果たしています。年金は、個人個人の自立を高め、社会の発展、安定に貢献している側面があります。
 このように、年金は、国民の生活、経済からみて不可欠な、重要な存在となっているといえます。


厚生労働省ホームページより

文責:富公平